[特集] 座談会 (3/3)

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■ 吉田 地元の生産農家、水産業者と協働
深川 他の都道府県のNPOとも連携

吉田 そうですね。またその一方で、NPO活動全体に対する地域住民の理解を得るための努力も欠かせません。NPO団体の有償サービスを「団体の利益のためだ」と思っている一般の方がまだかなり多い。本来は活動の継続に必要な資金を確保するために有償としているのですが、正しく理解してくれる住民はほとんどいません。とくに自治体からの委託事業の場合は、「県や市が行っているサービスだから無料だろう」という住民の先入観が強く働きます。この状態では、まちづくりを掲げた団体として各種の有償・無償サービス事業を展開しても、地域住民の理解が得られず成果を得ることはできません。

[写真]深川明子さん 深川明子さん (ふかがわ はるこ)
「石川おんなのスペース」代表
「石川おんなのスペース」は、平成12年6月に設立されたDV根絶に努める団体。講演会やシンポジウムなどのDV防止の啓蒙活動を展開する。また、DVホットラインの設置やシェルターの確保など、DV被害者の支援体制も整っている。

深川 県民や市民の理解を得ることは容易ではありませんが、住民が間違った先入観を持ち続ける限りNPOの進展は望めませんね。DV問題にしても女性に対する暴力に限らず、強者が弱者の人権を侵害する行為のすべてが対象となります。活動の中には、DV問題を抱える家庭に育ち悪影響を受けた子どもの心のケアも含まれるので、「子どもの健全育成」という地域づくりの一環になると思っています。ですから、家庭の問題ではなく、地域の問題と認識していただき地域住民の理解と協力が得られればうれしいです。

山内 NPOは、自治体の手の行き届かない面を有償サービスで補い、市民が自ら豊かな地域社会を作りあげる活動だと思います。今までは「自分だけが良ければいい」との風潮が住民の中に少なくありませんでした。しかし、これからの時代は、自分の行動に責任を持つことが必要だと思います。社会モラルを守って、歩きたばこはしないとか、地域の子どもの手本になることが求められます。NPOを継続することで、明るい地域社会がひらけることを粘り強く住民に話していきたいですね。そのために何かいいアイデアをお持ちでありませんか。

吉田 まず、自分たちの地域で活動する他のNPOとの交流や、ネットワーク作りから始めたいですね。我々はまちづくりが主目的の団体ですが、例えば、九谷焼の振興に取り組む団体と話をしますと、活動内容や手法は異なりますが、お互いに地域を良くしたいという共通項が見えてきます。こうして、団体と団体が手を結ぶことで、活動が活発になり、そこに住む人々の理解も得られると思います。

山内 個々の団体が「活動内容が違うから、目的も違う」と思わず、ちゃんと話し合えばお互いの思いは同じであることが分かります。このNPO相互の協力関係を県内にとどまらず、全国的に展開していきたいですね。

深川 その通りだと思います。実際、私たちはDV被害者の支援活動では、他の都道府県の団体と協力しています。被害者が加害者から身を隠せる「シェルター」の用意などがそうです。活動内容が身の安全に関わる性格上、このような連携は欠かせません。全国のNPOと連携することで、活動の幅も広がり、社会の認知度も高まるでしょう。

山内 協働について考えると、いろんな形が見えてきます。自治体や企業との協働、そしてNPO同士の協働など。私は、この中で石川県は全国に比べてNPOと企業との協働が遅れていると感じています。裏返せば、まだ企業にアプローチしていないだけで、企業との協働で成果を上げる可能性が大きく残されていると言えます。

吉田栄治さん (よしだ えいじ)
「はづちを」事務局代表
「はづちを」は、平成13年12月に発足し、現在、会員数は24名。豊かな地域コミュニティーの形成を目指すまちづくり団体で、主に加賀市と協働事業で「加賀市高齢者生きがい交流プラザ・はづちを楽堂」を拠点に活動し、その管理運営を市から委託され、高齢者を対象としたサークル教室の開催や、コミュニティーレストランの運営を行う。
[写真]吉田栄治さん

吉田 確かにそうですね。モデル事業でコミレスをオープンする際、使用する食材の地産地消にこだわりました。準備期間中に、地元の生産者農家や水産業者もお誘いしコミレスに関する講演会を開催して、NPOや今回の事業への理解を深めてもらい、はづちを共催の朝市やコミレスの普段の仕入れで食材を安く分けてくれることになりました。一方的にこちらが得をするのではなく、地元の食材の美味しさを知ってもらい消費につなげるねらいがあることを説明しました。少しずつですが、コミレスの利用者が地元農家の野菜をはづちを楽堂で開催する朝市で買い求めるなど、うれしい相乗効果を生んでいます。

深川 「はづちを」さんがうらやましいですね。DV問題は、なかなか企業の関心が向かず苦労しています。それは、DVに関しNPOと協働して、どんなメリットが得られるか見えにくいからです。社会問題に対して理解がある、くらいのイメージアップ効果しか思い浮かびません。それでも、例えば、女性を顧客とする化粧品メーカーなどを中心に協力を働き掛け、企業と一体になった活動を展開していきたいですね。

■ 吉田 規制緩和で活動しやすい環境づくりを
深川 行政関係者も事業に加わりともに汗を

山内 最後になりますが、NPOの活動を推進する上で、行政関係者に望むことはありませんか。

吉田 施設の運営管理を通して感じていることですが、現在、加賀市では法人格のないNPOへは公共施設の運営管理の委託が直接できないなど、まだまだ市民活動に関して法的な障害があります。先進的な自治体では、独自に公共施設の運営管理に関する基準と条例を設けて委託の門戸を広げているようです。ですから、自治体には委託事業のみならず多方面で必要に応じた条例の改正など、規制緩和を進めて法人格の有無にとらわれずNPOなどの市民活動を促進する環境を整えてほしいものです。

深川 「第6回全国シェルターシンポジウム石川2003」(全国女性への暴力駆け込みシェルター・ネットワーキング、全国シェルターシンポジウム石川2003実行委員会主催)を、今年11月に金沢市で開催します。「DVのない町づくりをめざして〜市民と自治体のコラボレーション(協働体制)」をメインテーマに、基調講演やシンポジウムを行います。県と市町村の関係者や、県民にDV問題を理解してもらい、一緒にDVを根絶していくことが目的です。自治体にはシンポジウムへの助成金はもとより、関係者に実行委員会に加わっていただき、ともに成功に向けて汗を流したいですね。もちろん、企業にも参画していただき、強力な協働体制を組みたいと望んでいます。

山内 今年度も県の「協働」モデル事業は継続されます。昨年度のモデル事業の成功が、各市町村や企業、他の団体、地域住民との協働を進展させるものと期待しています。「はづちを」さんや、「石川おんなのスペース」さんをはじめとする成功例が、次々と出てきてほしいと思います。本日はありがとうございました。

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