NPO・市民活動シンポジウム『NPOで何が変わるの。どうなるの。』
基調講演「分権時代の市民活動の役割」
 県民の皆さんにNPOに対する認識や理解を深めていただき、NPO活動への参加や支援の気運を盛り上げるNPO・市民活動シンポジウム「NPOで何が変わるの。どうなるの」が、去る8月27日、開かれました。基調講演では、日本NPOセンター常務理事である山岡義典氏が登壇し、地方分権が本格的にスタートする中、NPOが現在置かれている社会状況、期待される役割などについて説明しました。
写真 講演:日本NPOセンター
常務理事・事務局長 山岡義典
日時:平成12年8月27日(日)
会場:県社会福祉会館
 ■ キーワードは「市民分権」
 2000年4月1日から地方分権一括法が施行され、それまでの行政の仕組みが変わり、本格的な地方分権の時代に入ったと言えます。しかし、一般の人にはそういった実感がないのが実情でしょう。
 国がやっていたことは都道府県へ、都道府県がやっていたことは市町村へ移し、できるだけ市民の生活の現場に近いところで物事を決定していきましょう、というのが地方分権の主旨です。
 けれども、国、都道府県、市町村の役割を変えるだけでは、真の地方分権は成立しないと、私は考えます。「市民分権」…つまり、行政がやってきたことをできるだけ市民が独自にやっていくことができないと、本当の意味での地方分権ではありません。地方分権は行政内部の仕組みの変更だけでなく、市民、住民にも関わることなのです。
 5年で物事は変わります。この4、5年の間で日本の戦後を作ってきた法律の枠組みが大きく変わっていくことになるでしょう。98年に制定されたNPO法はそうした変革の先駆けと呼べるもので、こうした制度改革によって21世紀は大きく変わります。行政がやっていたことを市民に移行していく市民分権が、今後の社会変革のキーワードになるでしょう。
 ■ 世間型社会から市民型社会へ
 その具体的な変化の仕方を、わたしは「世間型社会から市民型社会へ」という表現で呼んでいます。
 「世間」というのは、基本的にとても温かいものです。半面、その一方で「世間に入り込めない」人がいたり、世間に入っている人は「世間を騒がせてはいけない」という側面も世間型社会にはあります。
 この世間型社会が、わが国の社会的仕組みの前提になってきたわけですが、これが国際的に通用しなくなり、また若者たちもそういう社会に居づらくなって、市民一人ひとりが独自の生き方をする社会、ある意味で冷たく厳しい社会とも言えますが、そうした「市民型社会」へ移行しつつあると考えることができます。
写真
 ■ NPO法人を「NPC」と呼んではどうか
 20世紀から21世紀に時代が変わって、そうした変化はさらに進むだろうと思います。NPOに対する認知も、期待される役割も拡大していくでしょう。
 NPOの「O」というのはオーガナイゼーション、すなわち組織です。グループ、つまり単なる有志の集りとは違います。オーガナイゼーションは、社会的な存在で、社会に対して責任を持ちます。内部に規則を持って、この組織はどういう組織なのか、だれが代表となって責任を担っているのか明確にし、社会の中で行政とも対等に付き合える、企業とも対等に付き合えるしっかりとした組織を作らなければならないというのが、NPOに課せられた課題です。
 従来、市民活動団体が法人格を持つのは、とても大変でした。特に財団法人、社会福祉法人など、非営利の法人格を持つのは難しかったわけです。そのため、多くの市民活動団体は、団体としてかなりしっかりしたところであっても、任意団体であるのが普通でした。
 でも、「世界的に見れば法人格を持って当然じゃないの」という状況に日本も変わってきています。
 役所のコントロールからずっと自由な法人格、しかも非営利というものを作ろうということで、NPO法が出来たわけです。今、日本全体で2500〜2600くらいのNPO法人が出来ていると思います。
 アメリカでは、非営利の組織でも法人格を持っていると「コーポレーション」と呼んでおり、いま日本の社会の中でも、NPO法人という、これまでになかった新しい組織が生れてきていますが、法人格を持たないNPOと分ける意味から、これを「NPC」(ノンプロフィット・コーポレーション)と呼んだらいいのではないかと思っています。
 最近、アメリカの西海岸地域でNPCの呼称が使われるようになっています。事業体というイメージの強い言葉ですが、私も日本で法人格を取ったNPOをこう呼んでもいいような気がします。
 ■ パッションを共有しミッションを遂行する
 ここで申し上げておきたい課題が一つあります。NPOの活動の原動力はNPOに参加する個々人の持っているパッション(熱意)です。でも、NPOにはミッションも大切です。ミッションとは、社会的使命。こういうものがきちんとないと組織として成り立ちません。
 各NPOがどういう社会をつくっていきたいのか、ミッションが明確でないと、市民活動を組織的に、そして継続的に行っていくことは難しいと言えます。
 個人個人のパッションを共有していく過程の中で、ミッションを作り上げていく。これがあってはじめて組織としてしっかりしたものができると思います。
 日本には古くからNPO的なものがたくさんあります。現在でも、町内会、婦人会、子供会、青年団などの「地縁組織」がたくさんあります。これらは、従来、世間型社会を構成していたものですが、これら地縁組織のNPO化ないしは、地縁組織とNPOとの協力が、新しい市民型社会を形づくっていくでしょう。

■山岡 義典(やまおか よしのり)
都市計画設計研究所、トヨタ財団、フリーのプランニング・コンサルタントを経て、1996年、日本NPOセンター設立とともに常務理事・事務局長に就任、現在に至る。日本福祉大学客員教授などを兼務。専門は都市計画、民間公益活動論、市民活動論。

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